千石涼太郎の日誌「時々記」

　昨今のジンギスカンブームの火付け役とも呼ばれる中目黒の「くろひつじ」に行って来た。こじゃれた感じ？　デートスポット？　そんなジンギスカンとは似つかわしくないイメージの店なので、つい行きそびれていたのだが、「一緒に行きましょう！」といってくれた編集者のＭ嬢と一緒に、乗り込んだのでありました。

　店内はとても明るく、思ったよりは高級感もなく、南国のリゾートっぽい感じ。入り口には無料で鍵がかかるロッカーがあり、衣類など臭いをつけたくないものを入れられるようになっている。さすが、東京である。北海道ではそんなサービスはしないもんなあ。などと感心しながらも、ジンギスカンってそういう食べ物でないんでないかい？　と思う。
　店内に入ると、いきなり「ご予約のお客様ですか？」の言葉。みんな予約してくるんだとさ。ジンギスカンだぜ、料亭じゃないんだよ。って思っていると、「七時半までなら」ということで、店内に。一時間半もあれば充分である。飲み屋じゃないんだからさ。
　席に着き、早速、ジンギスカンを食することになったわけだが、現れた若い店員に、ちょっとびっくり。ラードを鍋にのせず、いきなり野菜を焼き、肉も重なったままのせてくれちゃったのです。
　私は心の中で摩邪のように「ハア？」と叫んでしまいました。でも、M嬢の前なので、店員を叱りつけるわけにもいかず……「自分でやるからいいよ」と、店員を制し、すでに鍋にくっついてしまった肉を必死にはなすところからはじめたのでした。

　肉の量は東京の平均値。昨今は流行りの厚切りではないけれど、これくらいが食べやすくていい。たれはベルたれ風。値段の面でも流行りの感じ。腹一杯になるまで食べる店ではないのだろう。飲物の値段もちょっと高い。とはいえ店にはラードなし以外には不満はない。美味しく食べられる店として紹介していいだろう。私のように、なにかあったらジンギスカン、なにもなくてもジンギスカンという古いタイプの道産子でなければ、気に入るでしょう。
　ジンギスカンで儲けようと考えたら、こういう店になるんだなあとは思うけおどね。
　デートならいいけど、家族ではいけないなあと思えた店であった。まあ、いい経験にはなったな。というわけで、次の店を求めて、我々は歩き始めたのであった。